小説

0と1

15分位だろうか

笑い声が静かになり二階へ続く階段がみしみしと音をたてた。

「晴、寝てるの?誕生日だしお姉ちゃん達来てるから挨拶して一緒にご飯食べよう」

晴男は返事を詰まらせながら…小さい声で、風邪気味だと嘘をついた。


桜が咲き始める去年の今日は最悪だった

姉夫婦と一歳の姪が来て、苺が沢山乗ったケーキを買ってきたので仕方無く嫌々家族で食事をした。

東京に出張中の父も春先には戻って来ていて、晴男は髪で目元を隠し視線を合わせない様にするのに神経を費やしていたりした

姉夫婦を中心に誕生日は廻り、晴男の居場所などいらない様に感じた。

孫を嬉しそうに抱く両親の顔

子供が自慢の姉夫婦達

ツルン ゴン! 姪が転んだので晴男は焦りながら抱えたが、子供の扱い等知らないにひとしい

姪は大泣きし家族中が心配した

カチコチ…カチコチ…

自分の心臓が石になった様な感覚に襲われ晴男は悟った。

゙まるで幸せと不幸せが無理して笑いあっている゙

゙僕の居場所など無い゙



2時間程で姉夫婦達は帰って行った様だった

罪悪感と安堵が交差する胸を撫で下ろし、去年の今日よりマシな今年の今日に最低だと知りながら先程のパンを口にした。

そしてパソコンを付け[お気に入り]から幾つか毎日チェックしているサイトに入った




まだ少しばかり大きい制服に腕を通していた頃は、晴男は今程ネガティブではなかった。

けれど残酷にも想い描いていた社会人とはかけ離れた、目の前の画面のおびただしい汚れたコメントに共感する事が今は多くなった。

何処で変わり果てたのか

何故あの人は自分をみかぎったのか

何故今自分は殺したいのか


過去に縛られ゙これから先゙が晴男の耳を通りすぎて行く



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