小説

0と7

じわじわと、むせかえるアスファルトの道を時折立ち眩みながらも、顔を上げて歩くその姿を
優しい顔で見送る母がいる

振り返ると
いつまでも
何度でも手を振っている

恥ずかしくてやめろと言ったのに、毎日毎日。




晴男にとって社会復帰は困難であるには違いなかった

相変わらず世界は残酷に感じる事も多い

背を向け続けていた分
自分がどれだけコミュニケーション不足で、苦手な事が沢山あるのかも嫌と言う位実感する

けれど、だからこそ毎日を取り戻す様に生きる事が出来ている


片道1時間かけて晴男は夜間高校に通う

そんな自分を偉いとか自惚れる程馬鹿ではないけれど、あの薄暗い部屋にこもりながら長い夜を過ごすよりもずっとずっとマシだ




















あれから父には会っていない

父ももう充分過ぎる程、自分を責めながらすごしていたに違いない

会えば左腕をまた目にするだろう

そしたらまた深く自責の念にかられ、自ら蜘蛛の巣に足を絡めるに違いない


だから一度だけ

今の家族皆で撮った写真を送った

手紙なんてどう書くか解らないから

写真の裏に只一言



゙元気でずと…。
























END





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